ナレッジマネジメントとは?目的・具体的な手法・導入プロセスを簡単に解説
企業間戦争に勝ち抜くためには、知識やノウハウといった新たなナレッジを生み出さなければなりません。
しかし、社内のノウハウが体系化されていないと感じ、悩んでいる経営者の方もいらっしゃるかと思います。
本記事では、ナレッジマネジメントの意味やプロセス、ツールについて紹介します。
ナレッジマネジメントとは
ナレッジマネジメントとは、企業や従業員がこれまでに蓄積してきた経験や知識、ノウハウを企業全体で共有し、企業の力を高める経営手法のことをいいます。
ナレッジとは「知識」「知見」「ノウハウ」「技術力」「顧客情報」といった業務上で役立つ情報です。
これらを管理することから、「ナレッジマネジメント」と呼ばれているのです。
例えば業務によって得た知識やノウハウは、一部の部署や個人で蓄積されることはあっても、それを他の部署や他の従業員には共有されず活躍できていないこともあるでしょう。
このような課題・問題を解決するために、ナレッジマネジメントという手法が存在します。
ナレッジマネジメントの取り組みとしては、会議などで情報共有をしたり、メールやチャットを用いて共有する方法があります。
また、システムを導入し、知識やノウハウをシステム上で保存、編集、閲覧が可能となる取り組みもあります。
暗黙知と形式知とは
ナレッジマネジメントには、組織がもつ2つの知識が挙げられます。
- 暗黙知
- 形式知
それぞれについて詳しく説明します。
暗黙知
暗黙知とは、個人がもっている蓄積されてきた知識やノウハウなどのことです。
特徴として、言葉や文章で表現しなければ共有されにくいことが挙げられます。
形式知
形式知とは、言葉や文章で表現が可能な知識やデータなどのことです。
暗黙知を言葉や文章を使って表現したものが形式知となります。
ナレッジマネジメントの目的
ナレッジマネジメントの目的としては、以下の3つが挙げられます。
- 専門知識を共有する
- 顧客情報を共有する
- 企業の継続的な発展をめざす
それぞれの目的について、詳しく説明します。
専門知識を共有する
専門知識を共有することで、従業員の業務遂行能力を一定の水準に保つことができます。
個人の能力差を最小限にできれば、業務の属人化を防げるでしょう。
業務の属人化とは、その業務に特化した人物がいなければ、業務遂行が困難な状態をいいます。
わかりやすくすると、「〇〇さんがいないと仕事が回らない」という状態です。
もしもその従業員が退職や休職すれば、生産性が大幅に落ちてしまいます。
そこで、スキルを言語化・マニュアル化しておくことで、組織全体で情報共有が可能となり誰でも業務をこなすことができます。
このように、誰もが一定の水準で業務に取り組めることを「標準化」といいます。
属人化されていた業務を誰でもできるようにすることで、組織全体での業務改善が期待できます。
顧客情報を共有する
顧客情報を共有するのには、「顧客知識共有型」のナレッジマネジメントが向いています。
顧客知識共有型では、顧客データを共有し、管理することを目指します。
例えば、顧客から問い合わせが来た際は「担当者不在時には問い合わせ履歴を確認し、他の従業員が担当する」「営業社員がわからない点を他部門に質問してから、サポートしてもらう」など、データを共有・連携することにより、サービスの改善が可能となります。
企業の継続的な発展をめざす
ナレッジマネジメントを活用することで、企業や個人が得た専門知識をデータとして蓄積すれば、企業の継続的な発展を目指せます。
企業でその知識を必要としている人が必要だと感じたときに、効率的に利用できるでしょう。
ナレッジマネジメントを活用すれば、専門知識を有効的に共有できる、多角的な経営戦略により社員の成果がアップする、顧客満足度アップなど、企業にとって価値のある結果を期待できるでしょう。
SECIモデルとは
SEKI(セキ)モデルとは、継続されていく知識創造プロセスのことです。
知識創造プロセスとは、組織内の暗黙知を形式知に変換し、形式知同士を組み合わせます。
組み合わせることで新たな形式知が誕生し、その形式をもとに行動すれば再び暗黙知が誕生します。
このようにプロセスを継続させていくことを意味します。
共同化
共同化(Socialization)とは、同じ体験を通して、暗黙知の相互理解を図ることをいいます。
共同化では個人から個人へと暗黙知の伝達や獲得などの作業を行います。
同じ体験をすれば精神的暗黙知や身体的暗黙知を作り出すことが可能になり、体験を共有していなければ獲得が難しいと言われている暗黙知と同じ体験をすることが必要です。
表出化
表出化(Externalization)とは、暗黙知を形式知へ変換するプロセスのことをいいます。
暗黙知の形式知化を進める目的で、さまざまな人と話し合ったり考えたりすることで、形式知化を図ります。
そして言葉や文章、図式で表現し、変換されます。
形式知化について論理的に話し合いながら具体例を明確にするなど、周りに理解してもらうために工夫する取り組みが大切です。
連結化
連結化(Combination)とは、形式知とまた別の形式知を連結して新しい知識体系を作るプロセスのことをいいます。
形式知単体では機能しないため、形式知同士を組み合わせ、体系的・総合的な知識を作り出すことが大切です。
連結化では、より実践的な取り組みが行われ、初めて暗黙知が組織の知的財産へ変化することになります。
内面化
内面化(Internalization)とは、新しい知識体系として作られた形式知を共有し、知識として暗黙知化していくプロセスのことをいいます。
新たに取り入れられた知識は、経験や認知を通じ、新しい暗黙知を生み出します。
暗黙知は個人と組織の知的財産となり、再度共同化することにより他人と暗黙知の共有を図るといったプロセスを繰り返します。
ナレッジマネジメントの具体的な手法
ナレッジマネジメントの手法として、以下の2つが挙げられます。
- ナレッジマネジメントツールの活用
- 知識を共有する文化の構築
それぞれの具体的な手法について、詳しく説明します。
ナレッジマネジメントツールの活用
ナレッジマネジメントを具体的に使う方法として、ツールの活用が挙げられます。
ツールについて、詳しく見ていきましょう。
CRM
CRMとは、顧客関係管理(Customer Relationship Management)の略語で、顧客情報を管理するためのツールです。
顧客プロフィールや商談スケジュールなどの情報を共有する場合に優れています。
営業関連の部署で、情報の共有やスケジュール管理の際に活用すれば、役立つでしょう。
代表的なサービスとして、「Salesforce」「Zoho」などが挙げられます。
グループウェア
グループウェアとは、主に業務改善目的や、情報共有、社内コミュニケーションを行うことができるツールです。
従業員の予定表や日報を共有できるもの、文章を共有できるものなど、さまざまな機能を持ち合わせているのが一般的です。
代表的なサービスとして、「サイボウズ」「Office 365」などが挙げられます。
Googleアプリ
主な機能として、インターネット上でのデータ保存や共有が可能です。
ある一定の容量まで無料で利用できるサービスが多く、スタートアップ企業に利用されることが多いです。
文書ごとに割り振られたURLに連絡すれば、インターネット上で他の人にデータ共有できる点が大きな魅力でしょう。
Googleアプリの中でも「Googleドライブ」「スプレッドシート」「Googleドキュメント」などがよく利用されます。
知識を共有する文化の構築
ナレッジマネジメントの具体的な手法として、知識を共有する文化の構築が挙げられます。
IT技術の発展により、知の膨大化・細分化が進んでいる現在では、「総合知」の重要性も増してきました。
経営スピードが求められるなか、経営者やトップマネジメントが、いかにスピーディーに集合知を手に入れ迅速な判断を下せるかが企業間戦争において重要な点です。
また、それぞれの現場では従業員が蓄積された膨大な形式知を臨機応変に、瞬時に引き出せるベースの構築が必要不可欠となっています。
上記のように暗黙知から形式知への変換、集合知の迅速な集約、知を必要に応じて引き出せる能力は、企業活動において非常に重要なものとなっています。
そして、これらのニーズに対応可能なITシステムが求められるようになっています。
ナレッジマネジメントを推進するプロセス
ナレッジマネジメントを推進するためのプロセスとして、以下の3つが挙げられます。
- 経営課題を明確にする
- 共有すべき情報を洗い出す
- ナレッジマネジメントツールを導入・運用する
それぞれのプロセスについて、詳しく説明します。
経営課題を明確にする
システムを導入する前に、経営課題を明確にしましょう。
集約すべき情報や閲覧できる情報の範囲、システムタイプなどが異なってくるため、まずは目的を整理した方が良いでしょう。
ただ漠然と情報共有したいというだけでは、さまざまな情報が入り混じっているデータベースとなり、活用は困難だと考えられます。
共有すべき情報を洗い出す
目的に応じて共有すべき情報を洗い出します。
どのような情報を共有したいのか、どのようなフォーマットだとわかりやすいのかなど、情報を具体的にイメージしながら実施してみましょう。
共有すべき情報と、しなくても良い情報の境目を明確にしたうえで、客観的に見て理解できるかどうかを確認することも大切です。
ナレッジマネジメントツールを導入・運用する
経営課題を明確にして、共有すべき情報をもとに、ナレッジマネジメントツールを導入し、運用してみましょう。
情報によって、活用すべきツールは異なります。
また、更新ルールや表記方法などナレッジを共有する際の規則についても、ツールを導入する前に確認したうえで決定した方が安心です。
ナレッジマネジメントは段階的に落とし込んでいく
企業や個人が身につけたスキルやノウハウを組織内で共有すれば、企業にとって無形財産になるかもしれません。
ナレッジ共有をより効率的にするために、ナレッジマネジメントツールの導入を検討してみるのもおすすめです。