生産性向上とは?成功事例を交えてわかりやすく簡単に解説
会社を経営している方で「生産性向上ってどんな取り組み?」と思っている方は多くいらっしゃるかと思います。
本記事では生産性向上のための成功事例や算出の仕方などについて紹介します。
生産性向上とは
生産性向上の「生産性」とは、企業が投入した経営資源に対する成果を、どれくらいの効率で生み出せたのかをを求めることをいいます。
収入資源に対し、生み出された成果が大きいほど生産性が高く、小さいほど低いといえます。
また、生産性向上とは生み出す成果の割合を増やすか、投入する資源の量を減らしたりすることで、組織の生産性を高める取り組みのことをいいます。
業務効率化とは
生産性とは投入した資源に対してどのくらいの成果があったのかを計るためのものです。
このことから、生産性向上のためには、成果に直接つながる行動が大切になります。
その一方で「業務効率化」とは、非効率とされていることをより効率的にするための取り組みをいいます。
業務におけるバラつきや無駄な作業を省き、スピーディーに行うことを目的としているため、コスト削減につながる行動が重視されます。
「生産性向上」と「業務効率化」を区別し、目的に応じながら適切な施策を試しましょう。
働き方改革の目的
日本の働き方として、何十年も前から先進国の中でも特に「少子高齢化」が課題となっております。
若者層の人口が減少すれば、労働人口自体が不足してしまうでしょう。
さらに時代が変化していく中で、理想とされている働き方も変わっています。
古くから存在している「長時間労働は良い」「仕事は家庭よりも大事」といった考え方は、昔ながらの考え方といえるでしょう。
「プライベートと仕事を両立させながら働きたい」というニーズも高まっています。
しかし、長時間労働からくる疲労やワーキングプアなどの課題は、現在も多く存在しているのが事実です。
これらの課題を解決するために、労働者の働き方に合わせた環境や、意欲を増進できる職場環境を目指す必要があります。
働き方改革の目的は、労働者一人ひとりに合った「多様な働き方」が実現できる社会を目指しています。
この取り組みを機に労働者一人ひとりが前向きな気持ちで希望を持って働けば、生産性向上につながるでしょう。
生産性向上が求められる背景
生産性向上が求められる背景には、2つの問題が挙げられます。
- 日本の生産性の低さ
- 労働人口の減少
それぞれ詳しく説明します。
日本の生産性の低さ
日本の労働生産性が低い理由は、付加価値を生み出すことの弱さや、1つの仕事に携わる従業員が多いうえに時間をかけすぎていることなどが挙げられます。
大きく変動する国際社会で労働生産性を落とさない方法は、消費中心経済に移行するか、付加価値の高い業種へ移行する必要があります。
しかし、政策の失敗による影響でバブルが崩壊した日本では移行が難しく、国際社会での競争力を失ったといえるでしょう。
労働人口の減少
以前から問題視されていた少子高齢化の急加速により、日本は人口減少の時代を迎えようとしています。
人口の急減や超高齢化がこのまま続けば、労働力人口は減少していくでしょう。
内閣府が発表した資料によると、2060年の日本は「働く人」と「支える人」の割合が、逆転すると予想されています。
「生産性」は計算式で算出可能
生産性は、計算式で算出することが可能です。
・生産性=成果/労働量
成果の基準により、大きく2つに分類できます。
生産量を成果の基準にした「物的労働生産性」と、売上高から費用を引き、企業の加工や工夫によって付け加えられた金額を成果の基準とした「付加価値労働生産性」に分けられます。
以下では3つの生産性を求める計算式について、紹介します。
- 物的労働生産性
- 付加価値労働生産性
- 全要素生産性
それぞれ詳しく説明します。
物的労働生産性
物理労働生産性で算出できる成果は「生産量」です。
以下の計算式を用いて算出できます。
・物的労働生産性=生産量/労働量
・労働生産性(1人当たり)=生産量/労働者数
・労働生産性(1時間当たり)=生産量/労働者数×労働時間
・資本生産性=生産量/資本ストック量
付加価値労働生産性
付加価値労働生産性では「付加価値額」を成果とします。
以下の計算式を用いて算出できます。
・付加価値労働生産性=付加価値額(売上-諸経費[燃料費、材料費、運送費など])/労働量
付加価値の捉え方によって計算式が変わりますが、非製造業の場合は「付加価値額=売上総利益」と捉えて良いでしょう。
全要素生産性
全要素生産性(TFP)とは「労働や資産を含む、投入した全ての要素に対して得られた成果物の割合」を示します。
労働人数や資本量など、全ての要素を数値化して計算することはできないため、生産量の変化率から労働や資本の変化率を引いて、全要素生産性の増減を求めます。
・生産量/(労働+資本+原材料など)合成投入量
付加価値額/(労働+資本+原材料など)合成投入
生産性を高めるための取り組み例
ここでは、以下の生産性を高めるための取り組み例を紹介します。
- 業務を「見える化」する
- ナレッジマネジメントに取り組む
- 「やらない業務」を決める
- BPOで対応できる業務を決める
- システム・ツールを導入する
- 従業員のスキルアップを図る
- 働く場所・時間を柔軟にする
それぞれ詳しく説明します。
業務を「見える化」する
業務を「見える」化することで、各業務がいつ、どこで、どのように行われているのかを可視化できます。
可視化することで業務における無駄が見えやすくなり、改善すべき部分が見えてくるでしょう。
また、緊急時のリスクを回避することが可能となります。
もし業務でトラブルを起こした際、進捗を把握できないと上司や他の従業員が対応できません。
業務を見える化することにより、チームの動きを察知しながら瞬時にカバーできるようになります。
その結果、顧客からの信頼も維持しやすくなり、生産性の向上へと直結します。
ナレッジマネジメントに取り組む
ナレッジマネジメントについては、こちらの記事をご参照ください。
「ナレッジマネジメントとは?目的・具体的な手法・導入プロセスを簡単に解説」
ナレッジマネジメントに取り込むことで、人材育成の場面で大きな効果を発揮します。
業務マニュアルはほとんどの会社にありますが、ナレッジマネジメントにより従来のマニュアルでは得られない知識やノウハウを与えてくれます。
そのため、ナレッジマネジメントにより構築されたマニュアルを活用すれば、研修や教育を効率的に進められます。
「やらない業務」を決める
無駄な業務がないか、省ける部分がないかを探し出し、「やらない業務」を決めましょう。
業務の見直しを行う前に、まずは業務全体の流れを把握することが重要です。
おすすめの方法としてミーティングを開き、それぞれが業務で感じている問題点を提出し、効率を妨げているものを洗い出していきましょう。
自分では気付かなかった部分が、実は大きな問題だったケースもあります。
やらない業務を決めることで、生産性向上につながります。
BPOで対応できる業務を決める
BPOとは、外部に専門的な業務を委託すること支援サービスのことをいいます。
これにより、従業員が自社のサービス開発などに集中できるというメリットがあります。
BPOを行うにあたって、業務設計は重要です。
外部委託する領域と自社で取り組む業務領域の切り分けを行い、属人化・形骸化した業務を発見できます。
BPOを導入することで、業務フローを改善し、業務効率化が実現できます。
システム・ツールを導入する
パソコンやスマートフォン上で操作できるツールを導入することで、生産性向上が期待できます。
ツールの中にはパソコンでの事務作業を自動化できるものがあります。
今まで1時間かかっていた作業を30分で終わらせれば、生産性はアップするでしょう。
しかし、導入には費用や手間がかかります。
従業員のスケジュールやタスク管理を図る導入しやすいソフトウェアもあるので、ぜひ検討してみてください。
従業員のスキルアップを図る
従業員のスキルアップを図ることで、時間あたりの生産性向上につながります。
具体的な方法として、資格の取得支援や研修制度などがあります。
個々のスキルが上がれば、同時にモチベーションもアップします。
従業員のスキルアップを図り、モチベーションアップにつながれば社内の雰囲気が明るくなり、それだけで生産性向上へと近付けます。
働く場所・時間を柔軟にする
生産性向上を目指すためには、働く場所や時間を柔軟にし、働きやすい環境を整備する必要があります。
女性の労働力確保やライフワークバランスが推進されるなかで、通勤に縛られる負担を減らし、働きやすい時間で集中的に仕事をしてもらう環境を整えましょう。
具体的には、リモートワーク対応にして在宅勤務を可能にしたり、フレックスタイムを導入して柔軟性のある勤怠管理を行うと良いです。
他の事業の取り組みを参考にして、自社に合った体制の確率を目指しましょう。
生産性向上の成功事例
生産性向上の成功事例を紹介します。
行政書士・社会保険労務士業
顧客データをCDROMやUSBメモリで管理していたため、管理が煩雑で安全面に不安がありました。また、顧客の賃金計算も従業員が手入力で行っていたため、作業に時間がかかり、ミスも発生していました。
そこで、助成金を活用して顧客データの管理をクラウド化し、給与計算システムを導入しましたところ、顧客管理及び顧客の給与計算にかかる時間の短縮によって生産性が向上し、1人の従業員の時間給(事業場内最低賃金)を50円引き上げることができました。さらに、事業場内最低賃金以外の従業員の時間給も一律50円引き上げられました。
顧客のデータ管理をクラウド化し、給与計算システムを導入したことで、管理業務の効率化につながりました。
障害者福祉事業
就労継続支援事業における施設利用者の多様な作業機会を確保するために、製作する製品が、自動車部品、電気部品、紙製品、みやげ品等徐々に拡大し、その管理のための負担も増大していたので、生産管理業務の効率化を図ろうとしました。
原価管理や生産管理をエクセルによる手入力で行っていたため、労力を要していました。そこで、助成金を活用して原価管理・生産管理システムを導入しました。
導入後は、原価率の管理や生産状況の把握などが一元的に実施できるようになり、データの入力や図表の作成に要する時間が短縮。それにより、施設内で働く障害者の個別の対応に注力し、一人一人の障害に応じて力を発揮できるような環境整備の検討や実施に時間を使うことができました。
さらに生産管理にかかる時間の短縮によって生産性が向上し、6人の従業員の時間給(事業場内最低賃金)を30円引き上げ。事業場内最低賃金以外の従業員の賃金の引上げを実施しました。
原価率や生産状況を一元管理できるシステムを導入したことで、生産管理業務の効率化につながりました。
飲食業・販売業
従来、アルバイトの従業員がレジ作業や集計業務を行っていましたが、手計算による作業の効率が悪くなっていました。そこで、助成金を活用して集計レポート機能及び顧客管理機能付きレジスターの導入と従業員のIT研修を実施しました。
導入後は、顧客管理等にかかる作業時間の短縮と従業員のスキルアップにより、充実し
たサービス提供が可能となり、新規顧客の拡大及び業績向上につながりました。
また、レジ作業や集計業務にかかる時間の短縮によって生産性が向上し、1人の従業員の時間給(最低賃金)を40円引き上げが可能に。
多機能付きレジスターの導入とIT研修を実施したことで、業務の効率化と従業員の育成につながりました。
クリーニング業
従業員が手動で商品ポイントの計算・付与や顧客管理をしていましたが、計算ミス等により顧客の待ち時間が発生することや、顧客対応に一貫性を欠いていました。そこで、助成金を活用してPOSレジシステムを導入しました。
導入後は、ポイント算出にかかる作業時間や計算ミスがなくなったことで、顧客の待ち
時間等に対する不満や、不必要なポイント付与がなくなりました。
また、接客にかかる時間短縮及び顧客情報の一元管理によって生産性が向上し、2人の従業員の時間給(最低賃金)を50円引き上げに成功。
POSレジシステム導入により、早く正確に顧客へポイントを付与し、空いた時間を従業員のスキルアップに充てることで、顧客の満足度上昇につながりました。
生産性向上は仕組み化で実現できる
生産性向上を図ることで多くのメリットが得られます。
難しいと感じることがあるかもしれませんが、生産性の仕組み化を理解して取り組むことができれば、実際に効果を発揮できます。
ぜひ参考にしていただきながら、生産性向上に取り組んでみてくださいね。