デジタル人材不足の原因と企業ができる対策のポイント|行政の人材育成案も解説
近年、多くの企業ではDX(Digital Transformation)が推進され、デジタル人材の需要が高まっています。デジタル人材とは、最先端のデジタルを活用し、組織を成長させる人材のことです。
しかし、日本ではこのデジタル人材の不足が深刻化しています。そこで今回の記事では、デジタル人材不足の原因と対策ポイント、行政の人材育成案を詳しく解説していきます。
デジタル人材とは
デジタル人材とは最先端のデジタルを活用し、組織を成長させる人材のことを指します。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表している「DX推進に向けた企業とIT人材の実態調査」では、下記の職種がデジタル人材であると定めています。
- ビジネスプロデューサー
- ビジネスデザイナー
- アーキテクト
- データサイエンティスト
- UXデザイナー
- エンジニア
上記がデジタル人材に該当しますが、デジタル人材の不足は年々深刻化していくと予想されています。
デジタル人材不足の現状
日本では少子高齢化による労働者減少やDX推進が相まって、デジタル人材が不足しています。総務省が2021年7月に公表した情報通信白書では、日本におけるデジタル人材不足の深刻化を指摘しています。
アメリカも同様に人材不足に陥っているものの、日本はアメリカの2倍以上人材不足に苦しんでいます。企業はデジタル化によって激化する競争社会で生き残らなければなりません。DX化を進めるためにはデジタル人材が不可欠であるため、人材の確保が大きな課題となります。
将来的なデジタル人材不足の見込み
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」では、IT系人材の推移が予想されています。需要の伸びを高位・中位・低位の3つのシナリオに分けてシュミレーションを行ったところ、2030年には高位シナリオの場合、約79万人の人材不足になると予想されています。中位シナリオでも約45万人です。将来的にデジタル人材不足は深刻化すると言えます。
デジタル人材が不足する原因
デジタル人材が不足する主な原因は、IT需要の拡大やIT業界の変化の速さなどが挙げられます。下記では、デジタル人材が不足する主な原因を3つ解説します。
IT需要の拡大
IT需要の拡大がデジタル人材不足の原因となっています。IT市場は年々拡大しており、今やITを全く使わない事業の方が少ないと言っても過言ではありません。その市場拡大に人材の供給が追いついておらず、デジタル人材の不足が深刻化しているのです。
近年は、AIやIoTなど最先端のデジタル技術も発展し、ITの市場規模はさらに広がりを見せています。しかし、デジタル人材の供給状況は変わっていないため、今後もデジタル人材の不足に悩む企業は増えるでしょう。
IT業界の変化が速いから
IT業界の変化が速いことも、デジタル人材不足の原因となっています。IT技術は日々進化しており、最新のIT技術を使いこなすためには、専門性の高い知識やスキルが求められます。常に学び続ける意欲も必要です。
しかし、IT技術の進化についていけるほど、IT技術者の育成環境は整っていません。IT需要は拡大している一方で、IT技術者の育成が間に合っていないのが現状です。
最新のIT技術を使いこなせる人材が少ないため、企業間で優秀な人材を取り合っています。
労働人口の減少による人材不足
日本では少子高齢化が進んでおり、労働人口の減少による人材不足が起きています。これまでデジタル人材として活躍していた人が定年退職していく一方、新たに労働市場へ流入する人材は減り続けているのが原因です。特にIT業界は市場規模が拡大し続けているため、労働人口の減少による人材不足が顕著に表れています。
デジタル人材不足が企業に及ぼす影響
デジタル人材不足が企業に及ぼす影響は主に3つあります。
- 情報セキュリティに関するトラブルが発生する
デジタル人材が不足すると、情報セキュリティに関するトラブルが発生するリスクが高まります。情報セキュリティに関するトラブルは企業の信頼度を大きく下げてしまうため、なんとしてでも防ぎたいものです。
- 新たなサービス開発が困難になる
デジタル人材が不足すると、IT技術に関する新たなサービス開発が難しくなります。特にAIやIoT、ビッグデータ解析などを用いたシステム開発は、競合他社と差別化を図るために今後ますます重要度が高まると考えられます。新たなサービス開発ができないと、業績ダウンにも繋がるでしょう。
- 既存のデジタル人材の負担が増える
デジタル人材が不足すると、既存のデジタル人材の負担が増えます。人材不足が深刻化しても、業務量が減ることはありません。IT業界は日々拡大しているため、増える可能性の方が高いです。結果的に一人当たりの業務量が増え、労働環境も悪化してしまうでしょう。
行政におけるデジタル人材育成案
デジタル人材の育成に向けて、各行政では人材育成案を出しています。下記では、それぞれの内容を詳しく解説します。
デジタル人材育成プラットフォームの構築
- デジタルスキル標準の設定
全てのビジネスパーソンに向けデジタルスキル標準作成
DX推進人材に向けデジタルスキル標準作成
- デジタルスキル標準に基づいた教育コンテンツの設備
- 地方におけるDX促進活動支援
地域の企業・産業のDXに必要なデジタル人材を育成・確保すべく、実践的な学びの場の提供等を行うデジタル人材構成プラットフォームを構築するとともに、スキル・レベルの可視化に向けた環境設備を行う。
職業訓練のデジタル分野の重点化
- 公共職業訓練、求職者支援訓練、教育訓練給付におけるデジタル分野の重点化
IT分野の資格取得を目指す訓練コースの訓練委託費等の上乗せなどによりデジタル分野の重点化を実施。
- 人材開発支援助成金の拡充
IT技術の知識・技能を習得させる訓練を効率助成に位置付けることなどによりデジタル人材の育成を推進。
高等教育機関における人材の育成確保
- 数理・データサイエンス・AI教育の推進
各大学等の成果を全国へ普及・展開させるためのコンソーシアム活動等への支援を通じ、大学等において、文理を問わず数理・データサイエンス・AIを応用する力を持った人材の育成を加速
- リカレント教育の推進
大学・専門学校等が自治体や企業等と連携してDX等成長分野に関してリテラシーレベルの能力取得・リスキリングを実施するプログラムを支援。
デジタル人材の地域への還流促進
プロフェッショナル人材事業、先導的人材マッチング事業等による地域企業の経営課題解決に必要なデジタル分野等の人材確保に向けた支援や、地方創生移住支援事業、地方創生企業支援事業等による移住等を通じたデジタル人材の地域への還流を促進。
企業ができるデジタル人材不足解消の対策ポイント
デジタル人材は多くの企業で不足しており、今後も人材不足は深刻化すると予想されています。下記では、企業ができるデジタル人材不足を解消するための対策ポイントを5つ解説します。
業務効率化・自動化を進める
AIアプリケーションの活用は、人材不足解消に近づけることができます。例えば、情報システム部門に寄せられる質問や相談内容をデータベース化し、AIチャットボットを社内WikiやFAQポータルなどに実装すれば、返信対応に必要なリソースが少なくなります。
現状の業務のうち、デジタル人材が対応するべき業務はどれなのかを明確にすることが重要です。また、ツールで自動化できる作業も洗い出してみましょう。
自社でデジタル人材を育成する
自社でデジタル人材を育成することも、デジタル人材不足の解消に繋がります。日本では少子高齢化によって労働人口が減少しているため、既存の従業員でIT関連の技術も可能な限り遂行する必要があります。
自社で人材育成を行う場合は、勉強会や研修に参加させるのが効果的です。ただし、IT技術の進化スピードは非常に速いため、上司が指導できる内容は限られてしまいます。従って、デジタル人材育成の研修を行う場合は、外部の講師に依頼する必要があります。
新たにデジタル人材を採用する
新たにデジタル人材を採用するのは、人材不足を解消する上で最も一般的な方法です。しかし、前述したように労働人口が減少しているため、企業の採用活動は厳しい状況にあります。デジタル人材は特に需要が高く、他社よりも好条件でないとそもそも応募がこない可能性も考えられます。そのため、採用だけで全ての人材不足を解消するのは非常に困難です。
アウトソーシングを活用する
アウトソーシングを活用することも、デジタル人材不足の解消に繋がります。アウトソーシングとは、一部の業務を外部に委託することです。専門性の高い知識やノウハウを持ったプロに委託すれば、社内にデジタル人材がいなくても、業務を遂行することができます。その他、デジタル人材はいるがリソースが足りない場合にも、効果のある方法です。
新たな働き方の選択肢を増やす
フレックスタイム制やテレワークなど新たな働き方を導入することで、デジタル人材は自分のペースで働けるようになり、IT業界を志望する人が増える可能性があります。
デジタル人材は基本的にインターネット環境とPCさえあれば、どこにいても仕事ができます。最近ではWEB会議が一般的になりつつあるため、打ち合わせがある場合でも問題ないでしょう。
デジタル人材不足は今後より深刻化する
今回は、デジタル人材不足の原因や対策ポイント、行政の人材育成案などを詳しく解説しました。近年、日本ではDX化が推進されているのに対して、デジタル人材不足が深刻化しています。
今後もさらに深刻化していくと予想されているため、企業は対策を通して人材不足を解消しなければなりません。しかし、デジタル人材を採用したり、いきなり働き方の選択肢を増やすのは難しいでしょう。
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