人材マネジメントで活用できるフレームワーク8選|実施手順や注意点を説明
人材マネジメントとは人材を有効活用し、企業の目的達成に向けて組織をつくることです。利益を大きく伸ばすには強固な組織づくりが必要であるため、人材マネジメントが多くの企業で進められています。
人材マネジメントには従業員の生産性向上や人材配置の最適化などのメリットがあるため、まだ取り組みを進めていない企業は始めることをおすすめします。効果的な人材マネジメントを実現するにはフレームワークの活用が有効的です。そこで、本記事では人材マネジメントで活用できるフレームワークや実施手順について解説します。
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人材マネジメントとは
人事マネジメントとは経営戦略における人事的な戦略のひとつであり、人材を有効活用して企業の目的達成に向けた組織づくりのことです。人材不足を課題とする企業では人材マネジメントが取り入れられ、離職率の低下や従業員の教育の底上げにつながっています。企業にとって人材は重要な経営資源であり、事業を拡大するうえで従業員のパフォーマンスを最大限に活用する必要があります。
また、人材マネジメントは人事管理とは異なり、企業の運営に大きく関係する要素です。人材育成を単独で考えるのではなく、人事戦略と経営戦略を結び付けて一貫性を持たせることで、従業員のエンゲージメントを高められます。採用から退職までを見据え、人材の育成はもちろん、人材を活用する部署や役割から退職のタイミングまでの流れを明確化すると、人材の成長スピードの加速が期待できるでしょう。
人材マネジメントに活用できるフレームワークとは
人材マネジメントに活用できるフレームワークとは、企業が理想とする人物像の設定や人材育成の方向性の決定に必要な要素です。さまざまなフレームワークから自社の目的に合ったものを選び、運用を進める中で最適な仕組みに仕上げます。
人材マネジメントで扱うフレームワークとして採用や育成、評価、人材配置などの要素をはじめ、外部環境の分析を加えたものや教育の成果を確認していくものなどが挙げられます。フレームワークを社内に浸透させるまでにはある程度時間がかかるため、浸透させた時点で目標を達成した感覚になりがちですが、人材育成の環境を整備するにはフレームワークの継続的な運用が大切です。
人材マネジメントを活用するメリット
人材マネジメントを活用するメリットは以下の通りです。
- 従業員の生産性を向上できる
- 人材育成につながる
- 適切な人事配置が可能である
従業員を大事な経営資源としたマネジメントは、1人ひとりの行動に対する公正な評価やスキルアップのサポートを実現できます。そのため、従業員の業務意欲が向上し、個々の生産性向上は促進されるでしょう。
人材マネジメントでは「自身の行動が企業にどんな成果をもたらすのか」社員1人ひとりに理解させることで業務に対する意欲の向上を促せます。一方で、努力を評価されにくい、または評価されているのかさえ分からない状態では、従業員のモチベーションは低下してしまいます。
また、経営戦略の目標に沿って、しっかり従業員をマネジメントすることで優秀な人材の育成が可能です。コストのかかる採用で増員しなくても現段階で在籍する社員を教育すれば、多くの成果が期待できます。
個人の持つスキルや業務に対する姿勢、人事による評価を可視化して社内全体で共有することで、適材適所の人事配置に役立ち、業務効率化につながります。
人材マネジメントを活用するデメリット
人材マネジメントを活用するデメリットは以下の通りです。
- コストがかかる
- 社員の流出が考えられる
- オンラインでは困難である
人材マネジメントを活用するにはIT技術のシステム導入や研修、スキルアップのコスト支援などのコストが必要です。しかし、人材に投資をする意味を持って多くの予算を人材育成に投入する企業は多々あり、人材マネジメントに対する企業の意識が高いといえます。
また、時間とコストをかけて育成した従業員が他企業へ流れてしまう可能性もあるため注意が必要です。企業の目標達成のために人材育成したのにも関わらず、スキルを活かすことのできる環境でなければ社員のモチベーションは低下し、活かせる他社へと流出してしまうリスクが考えられます。
加えて、人材育成やマネジメントは人の教育や評価をおこなうため、本来なら対面が望ましいです。研修などオンライン化できる部分もありますが、実務経験を積ませるにはオンラインでは困難である職種も数多くあります。
人材マネジメントに活用できるフレームワーク8選
フレームワークにはさまざまな種類が存在します。種類によって特徴や活用シーンは異なるため、自社に最適なフレームワークを選ぶには1つひとつに対しての理解が必要です。ここでは、人事マネジメントに活用できるフレームワークを紹介します。
HPI
HPIとは「human performance improvement」の略語であり、現状の人材から企業の課題を洗い出し、解決法を分析するフレームワークを意味します。課題解決のためにどのような能力を社員に身に付けてもらう必要があるのか分析するものです。
HPIのプロセスは以下の通りです。
- ビジネス分析
- パフォーマンス分析
- 原因の分析
- 解決方法の選択
- 解決方法の実施
- 結果や成果の評価
- 現状の把握
現在のビジネス状況を把握して企業の目標を立てたあと、達成に向けて理想のパフォーマンスと現状のパフォーマンスを分析します。
次は理想と現実のギャップを生む原因の分析であり、課題解決に向けた手法の選択です。手法が決定したら実施し、結果や成果の測定、評価をおこないます。最後にプロセス終了後の現状把握をする段階でプロセスは終了です。
「目標を達成できていない」「理想と現実のギャップが埋まらない」などの場合は、再度パフォーマンスの分析に戻りプロセスを繰り返し、企業の目標達成を目指して人材育成を最適化します。
70:20:10フレームワーク
70:20:10フレームワークとはロミンガーの法則とも呼ばれ、人材育成の完成度を100とした場合、70は実務経験、20は他者とのかかわり、10は研修という割合を示したフレームワークです。割合に大小はありますが不必要なものはなく、3つの要素を結びつけて繰り返し学習することで従業員の成長を促進します。
70:20:10フレームワークは以下のプロセスで進行します。
- 実務経験により足りない能力を把握する
- 研修によって新たなスキルを身に付ける
- 上司や先輩からアドバイスを受ける
- 実務経験に活かす
上記の繰り返しにより育成に磨きがかかります。実務経験で得るものは大きいですが、学習や人とのかかわりを通して成長することも人材育成には欠かせません。
カークパトリックの4段階評価法
カークパトリックの4段階評価法とは、教育の評価方法であり、主に研修内容を見直すために活用されます。下記の4段階評価によって教育の成果を確認します。
- 反応
- 学習
- 行動
- 結果
反応では受講者によるアンケートやヒアリングで研修内容の評価を行い、学習では試験などを行い学習到達度の確認をします。行動の段階では実務経験による測定と評価を行い、結果では研修効果を総合的に測定し、プロセス完了です。費用対効果の高い研修を実現するために研修結果を測定することは重要といえます。
カッツ理論
カッツ理論とはカッツモデルとも呼ばれ、マネジメント層のスキルを整理するためのフレームワークです。カッツ理論には基本となるテクニカルスキル、役職が上がるほどに必要になるヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルの3種があり、職層に応じて強化すべきスキルを明確にします。
カッツ理論を企業で活用すると「従業員は自身のスキル開発に活用できる」「人事は育成や評価に活用できる」「組織は戦略的な人材育成に活用できる」などのメリットがあります。
SWOT分析
SWOT分析は次の4つの要因の頭文字からなる造語です。
- Strengths:強み
- Weaknesses:弱み
- Opportunities:機会
- Threats:脅威
SWOT分析とは外部環境の分析や自社の強み・弱みを把握し、分析するためのフレームワークです。自社・顧客・競合の3つの要因からなる「3C分析」をより具体化したものでもあります。
強み・弱みの両面を持つ要素については判断が難しく、間違った結果を生み出してしまう可能性があるため、PEST分析や3C分析など、ほかのフレームワークと組み合わせて活用すると良いです。
PEST分析
PEST分析は以下4つの要因からなる造語です。
- Politics:政治
- Economy:経済
- Society:社会
- Tecchnolog:技術
PEST分析とは外部環境が企業に与える影響を、将来性も含めて予想と分析をするためのフレームワークです。政治的な動きや世の中の流れなど、自社ではコントロール不可能な範囲を分析し、その要因が自社に与える影響を考えます。
外部環境の要因は無数であり、すべてを分類することは不可能ですが、PEST分析やSWOT分析などのフレームワークを積極的に組み合わせて活用すると、外部環境の変化に長期的に対応可能です。
SMARTの法則
SMARTの法則とは以下にある5つの要素の頭文字からなる造語です。
- Speoific:具体化する
- Measurable:測定可能にする
- Achievable:達成可能にする
- Relevant:上位目標とリンクする
- Time-bound:期限を定める
効果的な目標設定を可能にするフレームワークです。それぞれの項目で設定した目標をクリアすると、従業員のスキルや士気を上げる効果があります。
Speoificとは単位や日数、商品名などを入れて詳細に表現することを意味し、Measurableは目標を数値化して成果を測定できるようにすることを意味します。Achievableは高過ぎる目標ではなく達成可能なレベルの目標にすることであり、Relevantは経営目標から部門ごとの目標、個人の目標となるように個人と全体の目標を関連付けること、Time-boundは目標達成までの明確な期限を決めることです。
ロジックツリー分析
大きなテーマから課題となる要素をツリー状に分解し、論理的に考えるためのフレームワークです。ロジックツリーには要素分解(What)ツリーを始め、原因追及(Why)ツリーや問題解決(How)ツリーなどの種類があり、目的に合わせて使い分けることができます。
全体像が見えやすく、共有しやすい点がロジックツリー分析のメリットです。段階的に分解していく際は、徐々に要素を具体化していくと全体像が見えやすくなります。「漏れなく」「ダブりなく」を徹底することで、効果的な人材マネジメントが実現します。
人材マネジメントでフレームワークを活用する手順
以下の流れで人材マネジメントのフレームワークを活用します。
- 人材育成の状況を確認
- 経営目標の確認
- 活用するフレームワークの選定
- 人材育成の計画を立案
- 計画の実施
まずは自社でおこなわれている現状の人材育成を見直します。経営目標達成のために必要な人材、または必要なスキルアップなどを把握したうえで、効果的・効率的な取り組みはそのまま残し、不必要なものは取り払います。
次は経営目標の確認です。目標の達成に必要な人材やスキルを想定し、理想となる人物像を明確化します。現状の人材と理想となる人物像のギャップを埋めるため、活用できるフレームワークを選定したあとは人材育成の計画立案です。
計画設計では目標とゴールを具体的に設定しますが、できる限り数値化した方が検証と評価がしやすいです。また、フレームワークにおける施策の継続は重要ですが、結果が出て評価をする段階で必ず計画の見直し・改善を行いましょう。
改善後は立てた計画に沿って、実際に人材育成をスタートします。必ずしも設定通りに進める必要はなく、従業員や外部環境の状況によって柔軟に対応しながら進めるのが最適です。ただし、人材育成は相手が人であるため強制は逆効果であり、パフォーマンスの低下を招いてしまう点に注意する必要があります。
また、人事評価システムを活用し社員に公正な評価をつけるのも効果的です。さらに人材の行動と結果、評価を可視化することで社員の業務意欲向上につながります。
人材マネジメントでフレームワークを活用する際の注意点
人材マネジメントでフレームワークを活用する際の注意点は次の通りです。
- 自社の目的に合ったものを選定する
- 企業全体の課題として取り組む
- 社員に過度なプレッシャーを与えない
数多く種類が存在するフレームワークからひとつを選んで活用する際は、自社の目的に合ったものを選定する必要があります。選定の際はフレームワークを良く理解した上で慎重に判断するのが最適です。見誤ったものを活用すると期待する結果が得られないため、選定前の確認作業が非常に重要です。
また、経営トップや一部の部署だけではなく、企業全体でフレームワークに取り組むことを重要視しましょう。人材マネジメントは経営戦略の目標達成に向けた取り組みであるため、従業員どうしの間で認識がブレてしまうと、進みたい方向にうまく進行しないため注意しなければなりません。
「仮説による立案であるからうまくいかなくて当然」という心構えが必要であり、従業員に過度なプレッシャーをかけないよう注意が必要です。どんな課題にでも万能なフレームワークは存在しないため、複数のフレームワークを組み合わせてみたり、期待する効果が出なくても諦めず対処しながら継続したりする必要があります。フレームワークの分析結果がすべてではないため依存し過ぎにも注意しましょう。
効率的に人材マネジメントを実施するならフレームワークの活用を
人材マネジメントとは従業員を有効活用し、企業の目的達成に向けた組織づくりを意味します。利益を大きく伸ばすには強固な組織づくりが必要であり、人事マネジメントが大きく役立ちます。人事マネジメントで効率よく組織を強くするにはフレームワークを活用すると良いです。
人材マネジメントが確立すれば組織としての生産性向上や人材配置の最適化を実現できるメリットがあります。数ある種類のなかから自社に適したフレームワークを取り入れ、強い組織づくりを目指しましょう。