人手不足の原因は会社の責任?人材が不足する理由と解決方法を解説
少子高齢化のため労働人口の減少は加速中。どの業界や業種においても人手不足は年々悪化しており、厚生労働省の調査によると、運送業・郵便業、医療・福祉現場、サービス業、建設業では特に深刻なようです。
人手不足の原因には、高齢化以外にはどのようなものが考えられるでしょうか。
慢性的な人手不足に陥っている現状で、企業や人事担当者は、どのような対策をとることができるのか、本稿では、人手不足と人事にスポットを当てつつ、企業が人手不足に陥ってしまう原因の解説や、問題別の解決方法、取り組むべき対策について紹介していきます。
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人手不足は採用できない人事の責任なのか?
人手不足が続く原因は様々ですが、人事に責任があると考えてしまう人は少なくないようです。しかし、人事が主な採用業務を担当しているからといって、人手不足の責任の全てを人事に押し付けていいものなのでしょうか。
採用数が少ないなら採用フローの見直しが必要
会社で採用に関わる人間は、経営者や人事担当者ですから、人手不足は人事に責任がある可能性も否定はできません。理由として、予算が十分にあるにも関わらず採用数が少ない場合が挙げられます。
より優秀な人材を得ようとするあまり、採用までの道のりが複雑で、応募者が途中で離脱してしまったり、採用難易度が高すぎたりすることに原因があると考えられるからです。
優秀な即戦力を採用したい気持ちは、どの企業でも同じです。ですが、そのような人材ばかりを狙っていても、人手不足はなかなか解消されません。
経営者と人事がよく話し合い、採用ターゲットの人物像や採用フローの全体的な見直しを進めることが重要です。
離職率が高く退職者が多いなら社内環境や待遇が悪い
退職者数が増え、離職率が高くなっているとすれば、それは職場環境や待遇に問題があると言えます。退職理由の本音と建前には大きな差があり、ほとんどの場合、本当の退職理由を言わずに辞めるので、経営者サイドはこれらの理由に気づきにくいかもしれません。
しかし、人間関係や待遇面への不満が原因で辞める人はとても多いのです。
そうならない為には、労働環境や待遇面、社員のメンタルヘルスに問題が無いか調査を行い、待遇の改善や、上司に問題があるならば管理職の再教育を実施するなど、社内環境の適正化を目指す必要があります。
なぜ人手不足の原因を人事に押し付けてしまう企業が多いのか?
人手不足が続く原因は、人事のみの責任ではないことがわかりましたが、それでは何故、人事に責任を押し付ける企業が多いのでしょうか。そこには的外れな「思い込み」や企業の「丸投げ体質」が根本にあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
「人材に関すること=人事の責任」と思い込んでいるから
経営者が自ら採用を行うこともありますが、多くの場合、企業の採用業務のメインを担っているのは人事担当者です。ただそれだけの理由で「人手不足=人材に関すること=人事の責任」とつなげられてしまうというわけです。
本来、人事部単体で採用者を決めているわけではありませんし、そもそも会社で取り決めた経営戦略に基いて採用活動を行っているのですから、人事に関わる全てのことは人事担当者に責任があると思うこと自体、大きな間違いです。
人材採用に関することを人事に丸投げしているから
前述のように、本来であれば経営戦略を立てている会社や社長が責任を負うはずが、人事関連の業務全てを丸投げしているため、人手不足などの問題が生じた場合の責任まで人事部に押し付けている経営者もいます。
しかし、人事担当者はあくまでも会社員。決められた人事戦略に沿って採用業務を行うことしかできませんから、会社が採用フローの見直しや人事の方針を定め、人事担当者はいかにして欲しい人材の採用にまでこぎ着けるかや、採用後のアフターフォローに注力することで、人手不足の解消に一歩近づくことができるでしょう。
人事以外が原因で人手不足になる理由
採用数が少なく、退職者が増えてしまう状況に陥る原因には、人事の採用活動の他に、社内環境の悪化や社会的要因も関係しています。
少子高齢化によって転職が当たり前になっている
日本の採用市場は、少子高齢化に伴う就労人口減少のため、どのような職業でも求人数より求職者が少ない「売り手市場」が続いています。そのような中で、特に20~30代の若手や、専門的な知識・技術を持つ人材は引く手あまたであり、より条件の良い会社への転職を考えることはごく自然でしょう。
能力に見合う雇用条件を提示できない会社では、優秀な社員をつなぎ止めることが難しい傾向にあります。
優秀な社員が辞めてしまう理由と解決方法についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。
待遇や能力面で雇用のミスマッチが起きている
面接で会社の良い面やメリットばかりを強調すれば、採用に至りやすいかもしれません。
ですが、実際は「有休を取りづらい」、「求められる能力と自身のスキルに差がある」といった、待遇面のデメリットや能力面のギャップを入社後に知ることになると、雇用のミスマッチが起き、退職者が出てしまいます。
団塊世代が一斉に退職したため採用が間に合っていない
第一次ベビーブームに誕生した団塊世代は、日本の全人口の5パーセントを占めると言われており、この相当なボリュームの働き手が、60歳を迎えた2007年を皮切りにどんどん退職していきました。
2007年問題として、多くの企業が定年の引き上げや再雇用制度を導入して、大量退職への対策を講じてきましたが、それでも新規の雇用が追いつかず、人手不足は深刻化してしまいました。
採用コストが高く十分な予算を確保できない
求人を出し一人を採用するまでに必要な採用コストは、求人サイトへの掲載費や、人材紹介サービスへの手数料、会社案内の作成、面接者への交通費や宿泊費などを含めると、およそ100万円かかると言われています。
必ずしも採用につながるわけではないことを考えると、負担が大きく、求人をかけることに消極的になってしまう企業も少なくありません。
だからといって、無料や格安の求人サイトを利用しても、有効求人倍率が高く人材獲得競争の激しい昨今では、優秀な人材を確保することは難しいでしょう。
そして、採用後は人材の育成にもコストが発生します。育成コストについてはこちらの記事で詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
残業が多い上に休みが少なく有給も取りづらい
一般的に、カレンダー通りの営業を行う会社であれば約120日の年間休日があるはずですが、100日に満たないどころか、80日以下ともなると完全に「ブラック企業」です。
また、有休を申請しないことが暗黙のルールになっていたり、時間外労働が多く強制的であったりと、従業員が当然の権利も主張できないようでは、ワークライフバランスが重要視されている現代において、退職者が増えるのも当然でしょう。
また、残業代を支払わないなどの悪質な行為があれば、SNSやネットの口コミにより瞬く間に拡散され、今後新しい人材の獲得も難しくなり、刑罰などのペナルティを課せられる場合もあります。
人手不足の原因別におすすめする解決方法
人事以外にも、職場環境や少子高齢化などの社会問題、景気の悪化など、さまざまな問題が原因となっている人手不足。
解決へ導く為には、採用フローや待遇面、労働環境の改善が必要になります。
給料や福利厚生などが理由なら待遇面の対策をする
労働者にとって、給料はモチベーションの高低に直接影響します。「入社前に聞いていた額よりも少ない」、「仕事を正しく評価されず、いつまで経っても昇給がない」など、マイナスのギャップが企業に対して不信感を抱く原因となります。
入社前に待遇面の確認をしっかりと行うことと、場合によっては、福利厚生を充実させるなど、好条件に変更することも考えてみましょう。
雇用のミスマッチが起きているなら面接で必ず確認する
企業が開示している自社の情報が少なく不明瞭な点が多かったり、優秀な人材を逃したくないあまり魅力的な条件しか伝えていなかったりということがあると、入社後のミスマッチが起き、早期に退職してしまう可能性があります。
そうならないためには、デメリットをぼかしたり、ごまかしたりせずに、面接で雇用条件については具体的に細かく確認を行い、大変なこともあると正直に伝えましょう。
長時間労働などの労働環境に問題があるなら積極的に外注する
人手不足による業務の停滞を、無理な長時間労働を強いて社内リソースだけで補おうとするのではなく、テクノロジーの活用や、外部人材に頼ることで解決できる場合もあります。
AIやロボットなどのITシステムを導入することで、バックオフィスの定型業務やデータが記録され、人の手を使わずに処理することが可能になります。そして、紙による書類の管理は、整理の手間や紛失のリスクもあることから、電子契約などのペーパーレス化を積極的に進めると良いでしょう。ペーパーレス化が進めば、テレワークも捗るはずです。
またカスタマーセンターなど、多くの人手が必要な部署では、アウトソーシングを利用することで、問い合わせ窓口の業務が大幅に軽減されます。
単純に採用数が少ないなら多種多様な人材採用を行う
求人数よりも求職者が少ない現状では、条件に合う人材をピンポイントで探しているだけでは採用まで辿り着くことが難しくなっています。しかし、優秀な働き手は40代以下の健康な男性だけとは限りません。
例えば、子育て中の主婦(主夫)、シニアや障がい者、外国人など、家庭事情や体調、居住地などにより通勤や正社員としての勤務が難しいというだけで、優れたスキルを持つ人材はたくさんいます。政府の提唱する働き方改革に習う形で既成概念を取り払い、多種多様な人材を積極的に採用してみましょう。
多様な働き方を希望する人材や、その特性に合わせた業務を割り振ることに重きをおくことで、採用数を増やせますし、雇用後のミスマッチも防げ、業務の効率化にもつながります。
人手不足の原因は様々で一部に責任があるわけではない
人手不足が深刻化し、業務過多の状態が続くと、誰かに責任を押し付け、責めてしまいたくなるかもしれませんが、企業が人手不足に陥る原因は職場環境や、社会情勢など様々で、人事など特定の部門だけに責任があるわけではありません。
この記事をご覧になって、自社の問題点に気付くことができたのなら、それは好機です。まもなく日本は全人口の20%以上が高齢者という超高齢社会に突入し、労働人口の減少はさらに加速するでしょう。
企業の存続を賭けた人材獲得競争に勝利するための近道は、自社にどのようなケースが当てはまり、どのような打ち手を講じることができるのかをよく検討し、労働者にとってより良い職場環境を提供できるよう、誠実に柔軟に対応していくことに他ならないのです。