人手不足による影響とは?深刻な業界や原因、解決策を解説
「人手不足が深刻化している」「人手不足の解決策を知りたい」とお悩みの方は多いのではないでしょうか。企業が人手不足に陥ると、事業縮小や離職率の向上など、さまざまな面で悪影響を及ぼします。
そこで今回の記事では、人手不足の影響と原因、具体的な解決策を詳しく解説します。最後に企業の成功事例も紹介するので、自社の人手不足を解消するときの参考にしてください。
人手不足によって企業が受ける影響とは
人手不足によって企業が受ける影響として以下の3つが挙げられます。
- 従業員の負担が増える
- 離職率が高くなる
- 事業縮小を余儀なくされる
経営面や社員など、多方面で悪影響が出ることが想定されます。
従業員の負担が増える
人手不足は従業員1人あたりの業務量が増えるため、必然的に従業員の負担が大きくなります。所定の労働時間内に業務が終わらず、深夜労働や残業を余儀なくされることも珍しくありません。
労働環境が悪化すると、それだけ従業員の生産性も下がってしまうことが想定されます。ミスの多発や自社の商品・サービスの品質低下を招く可能性もあります。
また、従業員が疲弊してしまうと業務が上手く進まず、残業時間だけが増えていく可能性も高いです。長時間残業が続くと、従業員の心身に負担がかかり、最悪の場合過労死に至るケースもあります。
離職率が高くなる
人手不足によって従業員の業務量が増えると、モチベーションの低下に繋がりやすいです。モチベーションが下がり、仕事に対してやりがいを見い出せなくなると、他の企業や業界へ転職してしまう恐れがあります。
人手不足に陥っている中で離職率が向上すると、企業の人手不足はさらに悪化し、悪循環を招く恐れがあります。
事業縮小を余儀なくされる
人手不足は業務に携わる人が少なくなるため、必然的にこなせる業務量も減ってしまいます。既存の従業員が効率良く業務に取り組んだとしても、処理できる業務量には限界があります。
そのため、業務を回せず事業縮小を余儀なくされることもあります。事業を維持するので精一杯という状況では、新事業を立ち上げたり、事業規模を拡大したりするのは難しいです。人手不足は企業の成長を止める要因にもなり得ます。
日本の人材不足の現状
近年の日本では、実際にどの程度人手不足が進んでいるのでしょうか。
エン・ジャパン株式会社が調査した「2022年「企業の人材不足」実態調査」では、アンケートに答えた525社のうちの82%の企業が、人手が不足していることが分かりました。
引用:エン・ジャパン株式会社|2022年「企業の人材不足」実態調査
2019年の89%より数値は下がっているものの、いずれも高い数値であることが読み取れます。
企業が人手不足に陥る2つの原因
近年、人手不足が社会問題といわれていますが、その原因には以下の2つが考えられます。
- 少子高齢化に伴う労働人口の減少
- 人気の高い業界とそうでない業界の格差が大きい
少子高齢化に伴う労働人口の減少
人手不足の原因の一つに、少子高齢化があります。日本全体で少子高齢化が進んでいるため、労働人口が減少している状態です。
企業の戦力として長期的に活躍してくれる若者ほど人口が少なく、企業側は人材不足を感じやすくなっています。パーソル総合研究所の「労働市場の未来推計 203」では、2017年から2030年までの間に日本の労働人口が644万人不足すると予想されています。
また、若者が地方から都市部へ出てしまっているのも大きな原因です。近年の日本では賃金や安定性などの点で、魅力的な雇用が都市部に集中する傾向があるといわれています。そのため、特に地方は過疎化が進んでおり、地方企業の人手不足は年々深刻化しています。
引用:パーソル総合研究所|労働市場の未来推計 203
人気の高い業界とそうでない業界の格差が大きい
業界によって有効求人倍率の差が大きく、人気の高い業界と人手不足に陥っている業界の格差が激しくなっているのも大きな原因として挙げられます。人気の低い業界は慢性的な人手不足に陥っており、近年メディアで取り上げられる機会が多くなりました。
また、求職者が就職を希望する業界と、人手不足で求職者を求めている企業が多い業界が噛み合っていないことにより、業界によっては人手不足の悪循環に直面しています
人手不足問題が特に深刻な業界
人気の高い業界とそうでない業界の格差が大きいことを解説しましたが、特に人手不足問題が深刻な業界は以下の5つが挙げられます。
- 運送業界
- 建設業界
- サービス業・飲食業
- 介護・福祉業界
- 医療業界
以下では、人手不足が深刻化している理由や現状を業界ごとに詳しく解説します。
運送業界
運送業界の人手不足は「3K(きつい・危険・汚い)」というマイナスイメージが強く、新たな人材を確保するのが難しい ことが原因であると考えられています。それにも関わらず、EC需要の拡大を受けて運送需要は増加している状態です。
また、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、ECサイトで買い物する人が増え、市場に対する人材が足りていない状況に陥っています。
建設業界
建設業界は従来活躍していた社員が定年を迎え、少子高齢化の影響を受けているのが人手不足の原因として考えられます。現場で働く職人だけでなく、管理監督者双方が人手不足に陥っている状態です。
しかし、運送業界と同様「3K(きつい・危険・汚い)」のイメージが払拭できていないため、若い人材を確保するのが難しい状況にあります。
サービス業・飲食業
観光業などのサービス業や飲食業は、もともと人手不足だったのに加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて離職する人が増加したのが、人手不足の大きな原因です。
コロナ禍以降、サービス業や飲食業の需要が増えているものの、今だに人材不足が続いているのが現状です。
介護・福祉業界
介護・福祉業界は少子高齢化の影響を直接受けており、利用者数が増えているのにも関わらず、人材が不足しています。仕事へのハードルの高さや他の職種と比べ給料の安さが、慢性的な人手不足に陥る原因といわれています。
医療業界
医療業界は新型コロナウイルス感染拡大の影響を直接受けており、患者数が増加しているのにも関わらず、医師や看護師が不足しています。
コロナ禍以降、状況は落ち着きつつあるものの、定期的に感染拡大が発生しています。そのため、今後しばらくは、医療業界の人手不足を解消するのは非常に困難といわれています。
人手不足を解消する4つの解決策
人手不足を解消する4つの解決策は以下の通りです。
- 業務を効率化する
- テクノロジーを活用する
- 労働環境や評価制度の見直し
- 人材の多様化を図る
業務を効率化する
業務効率化とは、業務遂行におけるムリ・ムダ・ムラを解消することをいいます。ムリ・ムダ・ムラとは以下のような状態のことを指します。
ムリ | 短納期などムリなスケジュールなど能力以上に負荷がかかっていること。 |
ムダ | 生産性を悪くするもの。しなくても良い会議、いらない工程があるなど。 |
ムラ | 品質にばらつきが出るもの。繁閑の業務量の差など。 |
業務遂行におけるムリ・ムダ・ムラをなくすことで、業務が効率的に進みパフォーマンスを上げることが可能です。それによって、少ない人員でも業務を回すことが可能となります。
テクノロジーを活用する
これまで人力で行ってきた業務にITシステムを導入すれば、自動化によって必要なリソースを減らすことができます。ただし、ITシステムの導入には高額な費用が必要な上、導入したばかりの頃は従業員の負担となる可能性があります。
そのため、効果や費用を調べて複数のITシステムを比較検討したり、導入後の研修を手厚く行ったりするのがおすすめです。従業員は企業の成長に欠かせない存在なので、従業員の負担にならないことを一番に考えて選択するようにしましょう。
人材の多様化を図る
女性・外国人・障がい者を採用し、人材の多様化を図ることは、人手不足解消に繋げることが可能です。日本人の労働人口が減少するのとは対照的に、国内での外国人労働者数は年々増加傾向にあります。
また、障がい者の中でも専門的な知識やスキルを持った人材は数多くいるため、求める人材が見つかる可能性も高いです。業務内容によっては、採用する人材は必ずしも健常者である必要はありません。
女性には家庭と両立できるような環境を作る、外国人には丁寧なマニュアルを用意するなどの工夫をすれば、さまざまな人材が活躍できるようになります。
労働環境や評価制度の見直し
人材の多様化を図るためには、一人ひとりが働きやすい環境や平等に評価される環境づくりが重要となります。
具体的に、働きやすい環境や制度作りには以下のようなものがあります。
- テレワークの導入
- フレックス制度の導入
- 納得度の高い評価制度の導入 など
働きやすいような工夫をすることは、社員一人ひとりのワークライフバランスを整えることにもつながります。それによって、社員のエンゲージメントが向上し、定着率を上げることも可能です。
人材不足を解消した成功事例3選
人材不足を解消した成功事例として、以下の3社を紹介します。
- 株式会社下部ホテル | 年間休日数が増えて社員の満足度が向上
- 株式会社ナユタ |人柄重視の採用で人手不足を解消
- 有限会社栄工業 | テレワークの推進により働きやすい職場を実現
株式会社下部ホテル | 年間休日数が増えて社員の満足度が向上
株式会社下部ホテルでは、食事提供業務などを全社員で行うといったマルチタスク化により、旅館業特有の「中抜け勤務」を廃止しました。早番・中番・遅番のシフト制のみで業務にあたる仕組みを構築した結果、年間休日数が10日程度増加したうえに社員の満足度が向上しました。
株式会社ナユタ |人柄重視の採用で人手不足を解消
株式会社ナユタはシステムエンジニアの採用活動において、求職者の前職の雇用形態は気にせず、人柄を最優先事項として応募者の人物理解を深めた上で採用する方針を取りました。
その結果、就職氷河期世代のシステムエンジニアを採用することに成功。現在は、提案営業ができるシステムインテグレーターとして活躍できるよう人材育成を行っています。
有限会社栄工業 | テレワークの推進により働きやすい職場を実現
有限会社栄工業は規模の小さい会社でありながら、多能工化を推進し、テレワークを積極的に導入しました。
また、有給休暇制度を拡充し、従業員同士が互いに業務をカバーできる体制を整えたことにより、休暇を取りやすい社風を実現することで、社員が働きやすい環境となり、現在は定着率も向上しています。
人材不足の解消が企業の成長を促進させる
少子高齢化や業界による人気度の格差が原因で、人手不足に陥っている企業は少なくありません。慢性的な人手不足に陥ると、企業だけでなく社員にも悪影響を及ぼします。
人手不足に陥っている企業は、人手不足の解消で、新事業の立ち上げや事業規模の拡大が可能となります。
今回の記事で紹介した成功事例を参考に、深刻な人手不足に陥る前に、自社の人手不足を解決するようにしましょう。