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【一般社団法人マイドキュメンタリーJAPAN】「人生を記録する」ことで見える新たな可能性。自己探求プログラム『マイドキュメンタリー』が描く未来図

SAL編集部
SAL編集部
【一般社団法人マイドキュメンタリーJAPAN】「人生を記録する」ことで見える新たな可能性。自己探求プログラム『マイドキュメンタリー』が描く未来図

「過去を受け止め、今を受容することが、未来を切り開くカギになる」ーそのような信念のもと、個人の人生を写真と文章で記録する自己探求プログラム【マイドキュメンタリー】。
このプログラムを立ち上げた一般社団法人マイドキュメンタリーJAPANの佐藤氏に、キャリアの歩みやサービスの背景、未来の展望についてお話を伺いました。

これまでのご経歴を教えていただけますか

私は19歳の頃から、フォトグラファーとしての活動をスタートし、同時にパーカッショニスト(打楽器奏者)としてもプロのキャリアを積んでいました。
フォトグラファーとしては、「道々楽者」という会社を2015年に設立し、さまざまな撮影案件に携わってきました。一方で、教育現場での授業や講演、研修にも関わり、これらの活動を通じて「表現」と「教育」という2つの視点から多様な経験を重ねてきました。
表現者としてのキャリアと教育者としての視点を合わせて取り組むことが、今の活動の基盤になっています。

【マイドキュメンタリー】のプログラムを始めるきっかけとなったエピソードがあれば教えてください

【マイドキュメンタリー】の構想は、卒業アルバムの価値を再定義する取り組みから始まりました。卒業アルバムを「ただの記念品」ではなく、自分自身を客観的に振り返り、成長を確認するツールとして活用するというアイデアが発端です。この活動をさらに深めるために【マイドキュメンタリー】という自己探求プログラムを2020年にリリースしました。

このプログラムでは、子どもたちが自身の経験や価値観を掘り下げ、しなやかな「自分軸」を育むことを目指しています。
当初は私立校を中心に導入が進みましたが、公立校でも高い評価を得ることができました。ただ、公立校での普及には予算の壁があり、それをクリアするための仕組み作りが課題だったんです。
一方で、「すべての子どもたちにこのプログラムを届けたい」という強い思いがありました。そのため、2023年に「一般社団法人マイドキュメンタリーJAPAN」を設立し、企業研修やプロスポーツチームとの連携など、収益性のある事業から得た利益を活用して、無償提供できる枠組みを整えることにしました。この非営利法人を通じて、予算の限られた公立校でもプログラムを利用できるようにし、より多くの子どもたちに自己探求の機会を提供することを目指しています。

また、教育現場だけでなく、大人向けの研修にも力を入れるようになり、「自分を知り、未来を描く」ためのツールとして企業やスポーツチームでも広く活用されています。
このように、教育分野での課題解決と大人への普及を両立させることで、プログラムのさらなる発展を図っています。

【マイドキュメンタリー】の具体的なプログラム内容を教えて頂けますか?

【マイドキュメンタリー】は、自分自身で自分のドキュメンタリーを作るプログラムです。内容としては、大きく「エピソード1」「エピソード2」「エピソード3」の3つのステップがあって、順番に進めていく構造になっています。

▼エピソード1:「今の自分を肯定的に捉える」
具体的には、まず現在「自分とはこいう人」という自分を書き出し、続けて、他の参加者から「こういうところがすごいよ」などの他者目線での長所についてフィードバックを受けることで、自分の中にあるポジティブな面を捉えていきます。そして、自分の一番良いところを1位から3位まで決めたら、その背景にある経験やエピソードを整理していくんです。
最近の例だと、ある営業職の男性が「真面目」という特徴を挙げてくれました。その背景として「少年野球でコツコツ練習して結果を出したときに両親から褒められた経験」が原点にあると気づいたそうです。こういうエピソードを掘り下げて整理していきます。

▼エピソード2:「過去の強い原体験を客観的に捉え直す」
これもまず、些細なことから強い思い出まで、一度たくさん書き出してから「一番印象的な体験」を選びます。その体験を深掘りしていく中で、自分の価値観や頑張りを振り返る時間を持つんですね。

▼エピソード3:「未来を描く」
過去と現在を整理してきた上で、「これからどんな自分になりたいか」を考えていきます。ここまでくると、自分のストーリーが1つのドキュメンタリーとしてまとまってくるんです。
最後に振り返りでは、プログラムを通して「自分はどう成長したか」「どんなことを得られたか」を考えることで、プログラムを通して得た学びを自分自身で再確認します。

各エピソードの最後には、そのエピソードを象徴するビジュアルを選びます。たとえば「少年野球」の話なら、それをイメージできる画像をGoogleで検索したり、最近だと生成AIを使って作ったりします。この作業が、参加者に自分のストーリーをより客観的に捉えさせるきっかけになるんです。

こういったプロセスを通じて、自分のことを知り、人の話を受け止め、そして未来を描いていけるようになる。それがマイドキュメンタリーの大きな魅力です。

プログラムで意識しているポイントはありますか?

一番大事にしているのは「参加者が自然と深く考え、腹落ちできるようにリードすること」です。
「こういうことを考えましょう」と教えるのではなく、ワークやフィードバックを通じて、自分で気づける構造にしています。
また、シェアやフィードバックを繰り返すことで、他者とのコミュニケーションを通じた成功体験も得られます。「自分の話を受け止めてもらえた」「他人の良いところを伝えられた」という体験が、参加者にとって大きな成長のきっかけになるんです。

小学生がプログラムの最後に「友達の良いところを見つけられるようになった」「将来について初めてちゃんと考えられた」と振り返ることもあります。これはすごく大きな成果ですよね。

どのくらいの時間をかけるプログラムなのですか?

学校の場合、プログラムは8時間(8コマ)を想定しています。ただし、学校で1日8コマをまとめて実施するのは難しいので、例えば2コマを4回に分けて行うなどの形が多いですね。
企業研修の場合は1日で集中的に行うこともありますが、2日に分けて進めるケースもあります。内容や目的に応じて柔軟に調整しています。

実際にこのマイドキュメンタリーを受けていただいた法人様の感想や、受講後の変化について教えていただけますか?

実際に受講された企業の中で、社名を出しても大丈夫だと言ってくださっている天野製作所さんの事例があります。この会社では、特に若手従業員同士がお互いの強みを再発見・再認識することで、組織ビルディングや社内コミュニケーションの改善を目指していました。
トライアルとして3名の若手従業員が参加した時には、たった2時間のエピソード1のワークだけでも「他者が自分をこんなに肯定的に捉えているとは思わなかった」という感想が出てきたんです。その結果、自信がついたようで、仕事に対する姿勢や行動が積極的になり、実際に仕事の質やスピードが向上したという声をいただきました。また、参加者同士の距離感が縮まり、チームとしての結束力も高まったようです。
さらに、このプログラムを体験した3名の明確な成長が感じられたことから、社内でのフルバージョンの導入も前向きに検討されています。「愛社精神が増したように感じられる」といったフィードバックもいただいており、非常にポジティブな結果が出ています。

今後、マイドキュメンタリージャパンを広めていく戦略や、3~5年以内の目標について教えてください

最終的には、やはり子どもたちにこのプログラムを届けていきたいという考えがあります。そのためにもまずは、企業研修への導入を増やし、認知を広げることを最優先にしています。ただ現在、専任スタッフがいないため、理事たちと限られたリソースで運営しています。私自身、開発者として企業に直接活用例を伝える役割を担っており、営業活動を補完するための本の出版も求められています。
導入企業を着実に増やし、効果を検証することで広がりを加速させていきたいですね。

生産性向上や離職率改善といった課題に対し、社員が自身の価値観を整理できる仕組みを提案することで、人の根本的な問題解決を目指していきたいと考えています。

インタビュー企業
一般社団法人マイドキュメンタリーJAPAN:https://mydocu.jp/


この記事を書いた人

SAL編集部
SAL編集部 SAL henshubu

株式会社SAL

ピボットCEO(しよー)のSAL編集部は、不確実性が高まる時代において、変革を目指す経営者を応援するメディアです。自社経験に基づくノウハウで、中小企業が変化しやすい組織づくりを支援する「remodooo!」を提供するSALが編集する、主に会社経営者向けのコラムサイトで、お役立ち記事を配信しています。