人材育成はなぜ必要なのか?3つの背景と必要な制度やスキルとは
「優秀な人材にするには、どのように育成したらいいのだろう」「離職率が高くなると人手不足になってしまう」など、企業が抱える悩みに直面している経営者の方やマネジメント層の方は多いのではないでしょうか。
これらの悩みや課題を解決するため、経営者や人事担当者にとって欠かせないものが「人材育成」です。
本記事では、人材育成の必要性や制度、スキルなどについてご紹介します。
人材育成とは
そもそも「人材育成」の意味とは、従業員を企業の成長・発展に貢献できる人材になってもらうように、育成することです。
従業員の本来持っているパフォーマンス力を開花させることで、企業の業績の向上が期待できます。
また、人材育成は指導する側にとってもメリットがあります。育成経験を得て、自身の成長につなげることができ、成功させるために社内で協力し合うチームワークも強くなるでしょう。
しかし、人材育成といっても新入社員や中堅社員、管理職など対象に応じていくつかの方法があります。それぞれの人材育成での目標が異なるので、注意しましょう。
人材育成は、企業が長期的に競争力を向上していくためには欠かせないものです。人材育成に取り組むことで、従業員は仕事に対する意識向上以外にも、能力やスキルが高まり、成長を実感しやすくなるでしょう。
指導する側とされる側の充実感を抱くことで、チーム組織としてのパフォーマンスも向上するだけでなく、会社のビジョンや目標の実現のためにより一層貢献していくことができます。
しかし、人はすぐに成長するわけではなく、どうしても手間や時間はかかるものです。目指すゴールを明確にして、しっかりと取り組んでいくことが大切です。
人材育成が必要とされる背景
人材育成が必要とされる背景には、以下の3つが関係しています。
- グローバル化
- IT化
- 少子高齢化
それぞれ詳しく説明します。
グローバル化
人口減少により国内市場は年々縮小傾向にあります。そのため、海外でも活躍できるグローバル人材の育成にも力を入れていく必要があります。
実際に多くの企業がグローバルな観点で事業展開することが増えていますが、現実的には事業のグローバル化に人材の確保が追いついていない現状です。
グローバル人材を行うにあたって大切なのは語学力だけではありません。多様な価値観を受け入れる柔軟性やチャレンジ精神なども、必要になるでしょう。
IT化
少子高齢化の影響で労働供給が減少する一方、ITのさらなる進展により、人工知能(AI)を搭載する機械が労働の手助けとなり、労働供給の減少を緩和することも可能といわれています。
しかしIT化が進むことで、ITを使って仕事をする従業員にとって新たにスキルが必要となり、そこで高スキル・低スキルの格差が発生してしまう考え方もあります。
そのため、IT化において従業員はどのようなスキルを身につければ良いのか、また、どのような人材育成を行うべきかを考察する必要があります。
少子高齢化
厚生労働省によると、1950年では5%に満たなかった高齢化率(65歳以上の人口割合)は2015年には26.7%まで上昇しています。
この少子高齢化問題は2060年まで続くと予想されており、2060年には40%まで高齢化率が上昇すると言われています。このデータから働く人口数が年々低下していくことや、優秀な人材が大企業に流れていくことがわかります。
そのため、限られた人材を育成する必要性が、国としても企業としてもあるのです。
参考:「平成28年度版厚生労働白書」
企業が人材育成を必要とする理由
企業が人材育成を必要とする理由として、2つ挙げられます。
- 優秀な人材の獲得が難しい
- 優秀な人材の定着率が悪い
それぞれの理由について、詳しく説明します。
優秀な人材の獲得が難しい
企業が人材育成を必要とする理由として、優秀な人材の獲得が難しいことが挙げられます。定着率を上げることで有効的なのが、優秀な人材の退職を減らし、人材の流出を防ぐことです。
勤務年数の長い従業員がいることは、完璧なノウハウの蓄積が実現すると同時に、業務の精度も上がっていきます。これの繰り返しで人材を集める効果を発揮していますが、誰もが始めから完璧ではないでしょう。
企業にとって優秀な人材になってもらうためにも、人材育成が欠かせないという理由があるのです。
優秀な人材の定着率が悪い
企業が人材育成を必要とする理由として、優秀な人材の定着率が悪いことが挙げられます。定着率については、業界や職種によっても大きく異なります。定着率の向上は企業にとってかなり重要で、人材が安定して働かなければ、常に採用や育成をし続ける必要がでてきてしまいます。
また、採用がうまくいかなかった場合、人材不足問題が発生し、最終的には企業を運営できなくなる可能性があります。
定着率は企業にとって「企業存続」の必須条件といえるでしょう。
人材育成のために整備が必要な制度
人材育成のために、どのような制度の整備が必要なのでしょうか。
整備が必要な制度として、以下の3つが挙げられます。
- 人事制度
- 教育制度
- 報酬制度
それぞれの制度について、詳しく説明します。
人事制度
人事制度とは、企業が人材をマネジメントすることをいいます。広い意味では働き方の仕組みや人材教育、福利厚生も含まれています。
主に等級・評価・報酬から成り立っているのが特徴です。人材に対して評価されることで社内でのポジションや報酬に直接関係します。そのため、個人にとっても人事制度は重要な役割を果たします。
人事制度の目的は、企業で能力を発揮しやすくするために環境や制度を整え、個々に合った場所で働けるようにすることです。
また、経営資源で挙げられる「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」の中でも、目標を達成しながら事業を拡大していくのは「ヒト」です。人事制度は業務向上へと近付く戦略となるでしょう。
企業理念や事業目的を達成するには、正しい人事制度が必要であり、適切に人材を運用することが重要となります。
教育制度
教育制度とは、従業員に提供する教育全般のことをいいます。教育制度と研修を同じものとして考える人も少なくないでしょう。研修は社員教育といった形式の1つであるため、注意が必要です。
教育制度には、しっかりとした目的があり、スキル向上を目指したり業績を向上させるためなど、大きく4つに分類することができます。
- 組織の一員としての意識付け
- 目標意識
- 信頼の向上
- 生産性の最大化
報酬制度
報酬制度とは、役職やポジションなどによる給与や賞与のことをいいます。役職によって給与の上限と下限が決められており、評価判定制度で定めた範囲内の中から賞与や昇給などを決定します。
「メンバーシップ型雇用」では勤務年数をベースにして昇給しますが、近年では業務内容やスキル、経験から報酬が決まる「ジョブ型雇用」を積極的に採用する起業が増えています。
人材育成に必要な能力・スキル
人材育成に必要な能力・スキルは、以下の通りです。
- 問題発見能力
- 問題解決能力
- 業務遂行能力
- オーナシップ
それぞれ詳しく説明します。
問題発見能力
人材育成では、問題発見能力が必要とされています。現状を把握して問題を発見できなければ現状の問題が何なのかわからず、一般的な人材育成しかできないでしょう。
上司にとっても、問題を発見する能力は必要です。把握できていないと「部下はどんなことで悩んでいるのか?」「モチベーションは大丈夫か?」といった状態を理解できず、指導や関わり方に悩むことになってしまいます。
このように、組織にとって最適な人材育成を行ううえで、現状をしっかりと把握し、問題を発見する能力は必要不可欠といえます。
問題解決能力
問題を解決する能力も、人材育成において重要になるもののひとつです。人材育成における問題解決能力は、従業員の指導や育成だけでなく、発見した問題の解決に向けて、しっかりと取り組めているのかといった評価を行う際にも役立ちます。
問題や課題を発見したときは、スキルマップを作成すると良いでしょう。問題を解決するためには、どのような取り組みをしたら解決できるのかを明確にします。
また、「会社の強みを伸ばす」「苦手を克服する」ことをバランスよく盛り込むと良いでしょう。
業務遂行能力
人材育成において、業務遂行能力は必要とされているスキルです。業務を遂行する際は、計画を具体化して進行するかという部分で、スキルが求められます。
計画に沿って人材育成を実行・管理する工程は、全体の設計から具体的な実行段階まで必要となります。しかしあまりにも細かくチェックしすぎてしまうと、従業員のモチベーションダウンにもつながってしまう場合があります。
従って、従業員それぞれのタイプや目標内容などによって、干渉する頻度のバランスや関わり方を考えることが大切といえるでしょう。
オーナシップ
人材育成を担当するにあたって、各従業員が必要なスキルを身につけて成長できるよう、支援やフォローを行なっていく責任があります。
人材を育成するということは時間とコストが大きくかかるものであり、短期間で効果を発揮するものではありません。経営陣はもちろん、各部門のマネジメントメンバー、そして対象となる従業員に対して、リーダーシップを発揮して人材育成に取り組む姿勢が求められます。
上司や管理職、従業員からの信頼は、成長支援に直結するでしょう。
人材育成は企業の成長のために必要
人材育成では、自社の抱える悩みや課題を踏まえて、正しいカリキュラムを実践する必要があります。しかし、人材育成には手間や時間がかかり、即効性もないため、後回しにされがちなのが現状です。
社内だとなかなか進められないという場合は、外部のサービスを活用するのもおすすめです。精度の高い人材育成を実施し、従業員の成長とともに組織のさらなる発展を目指しましょう。