テレワークにおけるマネジメントの課題と成功のポイントを解説
新型コロナウイルス感染拡大防止の影響により、2020年の春ごろから日本でもテレワークが一気に本格化し、新しい働き方として定着しつつあります。
それに伴い、企業のマネジメントの手法にも様々な変化が起こっています。
例えばスタッフ間のコミュニケーションが減り、業務進捗の確認や評価などにおいて、従来のような対面でのマネジメントでは対応が難しいケースにお悩みの方も多いのではないでしょうか。
またマネジメントをされる側のスタッフも、慣れない在宅ワークで様々な悩みやストレスを抱えているかもしれません。
そこで今回は、テレワーク・リモートワークでのマネジメントにおける課題や、マネジメントのポイントについてデータや事例を交えながら解説していきます。
テレワーク・リモートワークでメンバー・部下が感じている課題・悩み
まず、テレワーク・リモートワークでメンバーが抱えている課題や悩みをご紹介しましょう。
出典:「第6回 働く人の意識に関する調査」調査結果レポート/公益財団法人日本生産性本部」
この結果を見ると、テレワーク・リモートワークの課題上位5点は以下の通りになっています。
- 部屋・机など物理的環境の整備 41.5%
- Wi-Fiなど通信環境の整備 36.6%
- 職場に行かないと閲覧できない資料・データのネット上での共有化 35.3%
- 情報セキュリティ対策 26.3%
- 仕事のオン・オフの切り分けをしやすい制度や仕組み 24.6%
大きくまとめると、①スタッフの仕事環境の整備②情報セキュリティ面の課題③オン・オフの管理となっていることがわかります。
続いては労務管理上の課題について見てみましょう。
出典:「第6回 働く人の意識に関する調査」調査結果レポート/公益財団法人日本生産性本部
労務管理上の課題については、上位5点が以下の通りになりました。
- 仕事の成果が評価されるか不安 31.3%
- 業務報告が煩わしい 25.4%
- 仕事ぶりが評価されるか不安 24.1%
- オフィス勤務者との評価の公平性 21.9%
- 孤独感や疎外感 20.5%
この結果から、「働いた成果や仕事に対する姿勢を正しく評価してもらえるか」を懸念するスタッフが非常に多いことがわかります。
業務報告においては、テレワーク・リモートワークでは仕事の進捗状況が対面より把握しにくいため、より詳しく記載したり、こまめに報告したりする必要があり、それが煩わしさを招いているのかもしれません。
またコミュニケーションの減少による孤独感や不安、さらに上司・先輩からアドバイスをもらえる機会を得にくいことなど、心理的な課題も上がっています。
テレワークにおけるマネジメント課題3つ
これらの結果をまとめると、テレワーク・リモートワーク下でのマネジメントには以下の3つの課題があることがわかります。
1. スタッフのスケジュール管理の難しさ
テレワーク・リモートワークにおいては対面で確認できないため、進捗状況を正確に確認するのがどうしても難しくなります。
さらにテレワーク・リモートワークではスタッフがオン・オフを切り替えにくいという面もあり、そこからスタッフのモチベーションや生産性が低下する恐れも。そういったメンタル面のフォローも必要になるでしょう。
2. スタッフとのコミュニケーション不足
テレワーク・リモートワーク導入によって、多くの方が悩んでいるのがコミュニケーション不足です。
オフィスでは何ということのない雑談から、部下が上司や先輩に悩み・不安を相談するきっかけをつかむことができました。
しかしテレワーク・リモートワークでは、そういった「ちょっとした雑談」がないため、これまでは何となく感じ取れていたスタッフの変化や不調を見逃してしまう恐れがあります。
このコミュニケーション不足をどう解決するかが、テレワーク・リモートワークを成功させるカギといっても過言ではないでしょう。
3. スタッフの評価基準が定まっていない
働く=出社というワークスタイルが当たり前だった日本では、テレワーク・リモートワークという新しい働き方での評価基準を用意できていない企業がほとんどではないでしょうか。
業務の進捗という点ではまだしも、スタッフの働く姿勢となると「直接、働きぶりを見ないことには判断できない」と頭を抱える管理者も多いのでは?
しかし評価基準が定まっていないと、マネジメントを担当する人によってスタッフの評価に差が出てしまう恐れがあります。
直接確認できないからこそ、適切に評価するための評価基準が必要になります。
では、これらの課題を解決するためにテレワーク・リモートワークにおけるマネジメントでは、何が求められるのでしょうか。続いてはその点についてご説明していきます。
テレワーク下のマネジメントに求められること
ここでは、テレワーク・リモートワークのマネジメントにおいて求められることと、その対策についてご紹介します。
仕事ぶりが見えづらい中で正しく評価できる仕組みを整える
テレワーク・リモートワーク下で人事評価をする際に欠かせないのが、評価方法や評価基準を明確にすることです。
そのため、まず管理部門全体で評価項目を確定し、共有するところから始めましょう。
その際に注意したいのが、オフィス勤務ではなくテレワークによる勤務を基準にした評価項目を設定することです。
テレワークではスタッフと直接対面する機会が減る分、評価対象が成果や実績に偏る傾向がありますが、成果に至るまでのプロセスも評価の一部として評価が必要です。
評価項目が確定したら、続いて達成度を管理する目標管理制度「MBO」(Management by Objectives)を取り入れましょう。
目標の達成度がわかりやすくなり、よりスムーズな評価が可能になるはずです。
1on1のほかコミュニケーション量を担保する
テレワーク・リモートワークにおける最大の悩みはコミュニケーション量の激減という企業は、非常に多いのではないでしょうか。
その対応策の一例が1on1によるコミュニケーションです。
上司と部下が1対1で話し合うスタイルですが、従来の個人面談と違うのは上司から部下へフィードバックや評価を行うのではなく、部下が主となって悩みや不安を上司に相談できる点です。
業務の円滑化や上司と部下の信頼関係の構築、部下のモチベーションアップなどの効果が期待できます。
リモートワーク・テレワーク下では1on1をはじめチャットミーティング、グループトーク、zoomなどオンラインツールを活用し、意識的にコミュニケーションを取っていくことが求められます。
新人メンバーとの関係性構築・教育方法
テレワーク・リモートワーク下で行う新人メンバーとの関係構築や教育は、従来以上にこまめな声かけが必要になります。
定期的に不安や質問などがないか尋ねたり、上記でご説明した1on1ミーティングで意識的に雑談を挟んだりするのも対策の1つです。
またテレワーク・リモートワークで新人研修を行う際は、通常よりわかりやすさを意識して役割や目標を設定してあげるとよいでしょう。
対面できないことによる新人の不安をサポートするきっかけになるはずです。
労働時間の管理、声がけ
始まった当初はサボる社員が出るのではないかという懸念もあったテレワーク・リモートワーク。
しかし実際はオーバーワークになってしまう人が少なくないようです。
オフィス出社とは異なり残業をしても申告しづらい、そもそも時間管理をされていないなどが理由です。
対策としては社内で労働時間に関する規定を定め、周知することが挙げられます。
または始業・終業時にはメールやアプリ、ソフトなどを使って会社に連絡するなどの方法も効果があります。
テレワーク下の仕事環境の整備、福利厚生などの充実
コロナ禍以前の福利厚生はオフィスに出社することが前提となっていましたが、テレワーク・リモートワークで増加する光熱費をはじめ生活費を補助する「在宅勤務手当」、デスクや椅子、インターネットの設備など仕事をするための環境を整える「環境整備手当」などが考えられます。
テレワークマネジメントの事例
テレワーク・リモートワークで求められるマネジメントについて見てきましたが、実際に改善に成功した企業はどう取り組んだのか、続いてご紹介しましょう。
株式会社コーワパートナーズ
(株)コーワパートナーズは、群馬県でオフィス機器販売およびネットワークシステムの構築・保守などを行っています。
同社はコロナ禍において県内最大の都市・高崎市に新たな営業所を立ち上げることに成功。
その理由はグループ会社全体の理念となるグランドデザイン(全体構想)に基づき、全社員が行動できたからだといいます。
【実施したマネジメント】
- 「仕事で必要なテクニックより、精神教育の方が社員教育の根本として重要」という認識の元でグランドデザイン(全体構想)の周知を徹底した。
【マネジメントの成果】
- 社員一人ひとりが何をすべきか自ら考えるようになった
- この逆境の中でもみんながやってくれるだろうという信頼感が生まれた
- 社内教育によって全社員が共通の理念を持つことで、コロナ禍の困難な状況を乗り越えることができた
参考:テーマ別企業事例 コロナ禍に負けない企業が取り組む 逆境に強い人材の育て方|日商 Assist Biz
freee株式会社
「会計freee」「人事労務freee」など、法人および個人事業主向けの事務効率化クラウドサービスを開発・運営するfreee株式会社。
「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションとし、ビジネスを運営する上で欠かせない事務業務をテクノロジーによってサポートしています。
同社は2020年3月から原則として在宅勤務へ移行しましたが、この時期は新型コロナウイルスが感染拡大の兆しを見せ始めたと同時に、同社のサービス利用者の多くを占めている個人事業主にとっては確定申告の真っ最中という大変な時期。
絶対にサービスをストップさせることなく、リモートワーク体制に移行するというミッションを抱えていました。
【マネジメントの内容】
- 雇用形態に関わらず、全従業員を対象としたフルリモートワーク体制を整える
- 捺印撤廃、ペーパーレス化、ビデオ会議の導入など出社を必要としないシステムづくり
【マネジメントの成果】
- VPNなどのセキュリティ環境を整え、自社リモートワーク率は99%まで伸びた
参考:リモートワーク導入成功事例から学ぶ!在宅勤務の運用のコツや支援ツールとは?
テレワークマネジメントにおすすめの書籍
成功事例に続き、テレワーク・リモートワークマネジメントを考える上でおすすめの書籍をご紹介します。
『テレワーク時代のマネジメントの教科書―見えない部下をどう管理するのか?』/高橋豊著
人と組織に関する調査研究を行うパーソル総合研究所が2020年、約6回にわたりのべ9万人を対象に行ったテレワークの実態調査をベースに、同社の執行役員を務め、組織開発やデジタルラーニングのコンサル経験を多数持つ高橋豊氏が著した一冊。
テレワーク・リモートワークにおいて最も根本的な変更を求められるのが、管理職に求められる資質やチーム作りなどのマネジメントの方法論です。
部下の仕事ぶりがわかりづらく、チームが一体感を感じにくい状況で、どうやってコミュニケーションし、教育し、チームのモチベーションを高めていくのかについて記されています。
『リモートマネジメントの教科書』/武藤久美子著
テレワーク・リモートワークの導入により、マネージャーが行うマネジメント業務は以前よりずっと難しいものになっています。
本書は主としてメンバーのマネジメントに焦点を当て、テレワーク・リモートワーク下で目指すメンバー像を【3つの「こ」】、そして、マネージャーが行うべきテレワーク・リモートワークのマネジメントを【10のポイント】と【15のケース】で紹介しています。
またマネージャーだけでなくメンバーの果たす責任、さらに会社・組織がマネージャーを支援するポイントについても言及しています。
『組織力を高める テレワーク時代の新マネジメント』/成瀬岳人著
著者の成瀬氏は10年近く前から100%テレワークの組織で管理者を務めてきた人物です。テレワーク・リモートワークのメリット・デメリットを知り尽くし、国や自治体のテレワーク事業の企画・プロジェクト運営などを多数担当。
さらに総務省委嘱のテレワークマネージャーとして、全国の企業から相談を受けてきたまさにテレワーク・リモートワークのエキスパートです。
本書はその知識と経験に基づいて、テレワークの組織を運営する方法を実践的に解き明かします。
一例として、管理者が部下を監視する「マイクロ・マネジメント」から、部下の行動を「支援する」管理への転換すること、その実現に向け部下が自分で動く「自律自走」する組織を作っていく必要があると説いています。
上手な人材活用でテレワーク化でも業務生産性をアップ
テレワーク・リモートワークが本格化した現在、マネジメントの難しさが浮き彫りになりました。
社員のモチベーションや生産性の低下につながる前に、マネジメントを適切に行うことが求められています。
企業の成功事例や書籍なども参考に、自社に合ったテレワークマネジメントに取り組んでいきましょう。
テレワークが本格化することにより、副業人材の活用もしやすくなりました。
外部の優秀な人材を活用して自社の営業活動をさらにグロースしたいと考えている経営者や管理職の皆様はぜひ、SALの在宅チームの構築支援サービス「remodooo!」をご検討ください。
外部の優秀な在宅ワーカーの力を活用して「在宅チーム」を構築することで、
- 新規雇用による採用コスト・人件費を増加させることなく
- 社内にノウハウを蓄積しながら
- アポイント獲得・成約率を高め、会社の利益率を高める
ことが可能です。
在宅ワーカー、副業人材の活用と言っても、自社の業務フローに合わせて上手に活用するためには、初期段階でのオンボーディングやディレクションの仕組みづくりなどやるべきことは非常に多く、立ち上げにはかなりのパワーがかかります。
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